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「されど電柱」

 写真愛好家にとって電柱と電線は大敵である。どんなに素晴らしい風景でも、画面を横切る電線1本で台無しになる場合がある。

 ▼日本は先進国の中でも特に電柱が多いようだ。ヨーロッパやアジアの主要都市のうちロンドンやパリ、香港には電柱がなく、台北やシンガポールも電線の9割以上が地下に埋設されているという。

 ▼日本では国土交通省が防災や交通安全、景観保全の面から無電柱化を進めているが、一番進んでいる東京都でもその割合は5%足らず。和歌山県は約1%で47都道府県中23位である。

 ▼とはいえ、一度敷設した電線や通信ケーブルを地中に埋める工事は大変な費用と労力がかかる。田辺市内では、JR紀伊田辺駅と扇ケ浜を結ぶ田辺大通りのうち約550メートルの地中化工事が2011年12月から5年がかりで続いている。総事業費は約6億円だから、1メートル当たりの費用は100万円を超える。

 ▼串本町の名所重畳山に登った方から先日封書を頂いた。山頂に近い展望所からは橋杭岩や大島、潮岬を望むことができるが、同封された写真の手前には電柱と電線が大きく写っていた。「以前登ったときにはなかったように思う。せっかくの眺望が台無し」と残念がっていた。

 ▼田辺市中辺路町近露では2年前、樹齢280年のシダレザクラの近くを通る電線を市が移動するという粋な計らいがあった。観光立県を目指すというなら、電柱1本にも気を配りたい。 (長)

(2016年2月27日更新)

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