無電柱化で雰囲気一変 高山の古い町並み


無電柱化で雰囲気一変 高山の古い町並み

以前の町並み(右、高山市提供)と無電柱化ですっきりした町並み=高山市大新町で
写真

 高山市の古い町並みで、市は電線を地中に埋める「無電柱化事業」など周囲の景観を伝統的な建物と調和する取り組みを進めている。昔ながらの景観が復活し、住民からは評価する声も上がっているが、観光客誘致など実際の効果にどうつなげるかが課題となる。

 ■一 変

 今年三月、下二之町と大新町にあった電柱五十六本と電線をすべて地中に埋める市の事業が、七年の歳月を経て完了した。大新町で茶店を営む野畑国久さん(65)は「空が広くなり、景色が一変した。これほど良くなるとは」と驚く。

 事業の一環で、市は昨年から八幡町と下三之町で側溝の工事を進めている。側溝の壁は石を切り出したような質感を再現。ふたは金属板の上に木材を載せた。八幡町では八月に工事が終わり、下三之町では秋の高山祭に合わせ、九月末に終える予定だ。

 ■活 用

 市は二〇一〇年に景観計画を策定して以降、伝統的な建物の保存だけでなく、建物と調和する景観づくりにも取り組んできた。昨年十月には古い町並みに建っていたNTT西日本の高さ三十五メートルの鉄塔(上二之町)と、十六銀行高山支店(下三之町)の看板が撤去された。無電柱化や側溝の改良工事もその取り組みの一つだ。

 住民からは「景観が良くなった」と評価する声が多いが、問題もある。側溝のふたの表面は木材であるため、耐久性が低い。大新町に住む四十代の男性は「ふたの修理費は自己負担。どこに頼めばいいのかも分からない」と首をひねる。市は、側溝のふたは住民の所有物となるため、修理費を出せないとしている。

 無電柱化事業に費やした額は十二億五千万円。地元住民でつくる市景観町並保存連合会の会長川上幸夫さん(82)は「伝統的な景観が戻り、住民もその良さを再認識できた。これからの活用を考えていかないといけない」と今後を見据える。

 ■住 民

 高山市も、無電柱化を入り口に、住民らの景観保全に対する意識の高まりや観光面への波及効果を期待している。事業を進めてきた市都市整備課の西永勝己さん(49)は、住民自身による積極的な町並み保存活動をこれから後押ししたい、と言う。「景観が良くなると、そこを歩く観光客も増える。古い町並み全体がにぎやかになれば」と話す。

 市の取り組みに評価委員として関わっている工学院大(東京)の建築学部教授、後藤治さん(53)は「観光客が古い町並みにとどまる時間が増え、商業的にも効果が見込まれる」と評価する一方で「無電柱化だけで終わるのではなく、事業対象の周辺地域も含めて町並みをアピールしていかないといけない」と課題を示した。
◆記者の眼 

 大新町を歩くと、確かに隣の下一之町と比べて景色が“広い”印象を受ける。せっかく良くなった景観なのに外国人観光客に比べ、日本人はあまり見当たらない。後藤さんは「日本人に街歩きの良さがまだ広まっていない」と話す。これだけの費用をかけた事業なら、もっと積極的に良さをアピールしても良いのではないか。

 無電柱化によって道路が広くなった分、緊急車両が通りやすくなり、防災面にも一役買ったといえる。同時に観光客の車の乗り入れが多くなることも懸念される。交通対策も含め、今後の町並み保存に注目していきたい。

 (片山さゆみ)

http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20140921/CK2014092102000023.html

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