「電柱と放置車両」

「電柱と放置車両」


 阪神大震災で被災したとき、いろんなものが救援活動の障害になることを知った。倒壊した家屋、折れた電柱、垂れ下がった電線、路上に駐車した車、道路中央に飛び出した自動販売機などである。

 ▼大阪市と神戸市を結ぶ国道2号の広い歩道は、西宮市と芦屋市の境界付近で倒壊した家屋にふさがれていた。自宅近くの2車線道路も、電柱が倒れ自販機が散乱して、しばらくは車両が通行できなかった。

 ▼道路の両側には違法駐車の車が並び、車内では倒壊した家から逃げ出した人たちが身を寄せ合っている。ミニバイクで勤務先に向かう途中、救急車がいくらサイレンを鳴らしても前に進めない場面を何度も目撃した。車や電柱という文明の利器が救援を妨げる「凶器」となっていたのである。

 ▼政府はいま、災害時に公道をふさいだ放置車両を強制撤去したり「やむを得ない限度で」車両を壊したりできるように法律の改正案を練っている。国土交通省も来年度から、緊急輸送道路で新たな電柱を立てることを禁止する方針を固めたそうだ。それぞれが「明日、来るかもしれない」大災害への備えである。
 ▼近い将来、南海大地震が予測され、大きな被害が懸念されている和歌山県では、こうした事態への対処は緊急を要する。その備えはどこまで進んでいるのか。

▼災害は忘れたころにやってくる。大震災の教訓は、生かしてこそ意味がある。万が一への備えをわがこととして考えたい。(石)



(2014年09月25日更新)

http://www.agara.co.jp/modules/colum/article.php?storyid=281214

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